認知症介護の基本と大切なポイント~優しさと理解をもって向き合うために~
2025年04月15日
認知症ケア
認知症の介護は、家族にとって初めての体験となることが多く、不安や戸惑いを抱える方も少なくありません。認知症の症状や進行は個人差が大きいため、一律の方法ではなく、患者様一人ひとりの状況に応じた対応が求められます。
本記事では、認知症介護における基本的な姿勢やポイントを分かりやすく解説し、患者様とご家族がより穏やかに過ごせるようなヒントをお伝えします。日々の介護が少しでも負担を減らし、心温まる時間を増やせることを願っています。
本人の尊厳を守りながら寄り添う

認知症の介護において、まず大切なのは「本人の尊厳を守ること」です。認知症の方も一人の人間としての価値や尊厳を持ち続けています。そのため、どのような状況であっても、相手を尊重する姿勢を忘れないことが重要です。
また、介護をする際には「焦らず穏やかに接する」ことが求められます。認知症の方は、記憶や判断力の低下により混乱や不安を感じやすい状態にあります。そのため、家族や介護者が慌てたり、感情的になったりすると、相手にもその緊張感が伝わり、さらに不安を増幅させてしまう可能性があります。
たとえば、相手が話を忘れてしまった場合、「どうして忘れたの?」と責めるのではなく、「一緒に思い出してみようか」と寄り添う姿勢が大切です。このように、相手のペースに合わせて優しく穏やかに接することで、安心感を与え、穏やかなコミュニケーションが実現します。
介護はときに忍耐が必要な場面もありますが、相手の目線に立ち、寄り添うことで、お互いにより良い関係を築くことができるでしょう。認知症介護は、単に日常のサポートを行うだけでなく、心と心のつながりを大切にする姿勢が鍵となります。
本人の意思を尊重し、できることをサポートする

認知症介護において、本人の意思を尊重する姿勢は非常に重要です。認知症の方が可能な限り自分の力で行動できるようにサポートすることは、自立心を保ち、生活の質を向上させる大切なポイントです。
たとえば、本人が「料理をしたい」と希望した場合、家族が全てを代わりに行うのではなく、安全を十分に確保した上で、本人ができる範囲で調理を任せることが効果的です。このように、本人の意志を尊重しながらサポートすることで、自信や満足感を得られる時間をつくることができます。
ただし、注意が必要なのは、過干渉にならないよう心がけることです。介護者が先回りして全てをやってしまうと、本人の能力が徐々に低下する原因となることがあります。そのため、見守りながらサポートする姿勢を持つことで、本人の能力を維持し、自己表現の機会を奪わないことが大切です。
認知症介護は、「何をしてあげるか」ではなく、「本人がどうしたいか」を重視し、安心して取り組める環境を整えることが求められます。このような視点を持つことで、より良い介護環境を築くことができるでしょう。
自然な接し方で安心感を育む認知症ケア
認知症の方と接する際には、「認知症であること」を過剰に意識しすぎないことが大切です。認知症という状態を特別視しすぎると、接し方がぎこちなくなったり、相手に不安を与えてしまう可能性があります。普段通りの自然な接し方を心がけることで、本人も安心し、心が安定しやすくなります。
自然体での接し方が安心を生む
認知症の方も私たちと同じように、穏やかで快適な日常を望んでいます。そのため、日常生活の中で自然体で接することが大切です。たとえば、「特別に何かをしてあげよう」と思いすぎるよりも、普段の家族のようにリラックスした雰囲気で接することで、相手も安心感を得ることができます。
笑顔が不安を和らげる鍵に
笑顔は、相手に安心感を与える最も効果的な方法の一つです。家族が笑顔で接することで、認知症の方の不安や混乱を和らげる効果が期待できます。また、会話をするときや一緒に過ごす時間には、できるだけ明るい雰囲気を作るよう心がけてください。たとえば、好きな音楽をかけたり、一緒に楽しい話題を見つけたりすることで、自然とお互いの気持ちがほぐれるでしょう。
明るい雰囲気を作る3つのアイデア
- 過去の思い出を一緒に振り返る
昔のアルバムや好きだった映画など、本人がリラックスできる内容を話題にする。
- 日常の中にちょっとした楽しみを取り入れる
一緒にお茶を飲んだり、散歩をしたり、ちょっとしたことでも明るい時間を共有する。
- 焦らずゆっくりと会話を楽しむ
無理に話題を引き出そうとせず、相手のペースに合わせた会話を心がける。
自然な接し方は、認知症の方だけでなく家族自身の心の負担も軽くします。穏やかで楽しい時間を増やすことで、介護の中に喜びや達成感を感じられる瞬間が増えるでしょう。焦らず、無理をせず、自然体での接し方を心がけてみてください。
優しい言葉と共感の姿勢で認知症の方に寄り添う

認知症の方と接する際には、命令的な口調や否定的な言葉を避け、優しく丁寧な接し方を意識することが大切です。相手が理解しづらい状況で強い言葉を使うと、不安や混乱を招き、心を閉ざしてしまう可能性があります。一方で、優しい言葉と共感の姿勢を持つことで、相手は安心感を得られ、より穏やかな時間を過ごすことができます。
肯定的な言葉で安心感を伝える
たとえば、相手が物事を忘れてしまった場合、「どうして忘れたの?」と責めるような言葉ではなく、「一緒に確認してみよう」といった肯定的な言葉を使うことで、相手にプレッシャーを与えることなく穏やかに対応できます。このように、相手の気持ちに寄り添った言葉を選ぶことで、信頼関係を築くことができます。
マンツーマンで落ち着いた対応を心がける
また、複数人で一度に話しかけると、相手に圧迫感や混乱を与えることがあります。そのため、基本的にはマンツーマンで落ち着いて接することをおすすめします。一対一の環境で、ゆっくりと時間をかけながら話しかけることで、相手も安心してコミュニケーションを取ることができるようになります。
丁寧な接し方のポイント
- 声のトーンを落ち着かせる
高い声や早口は相手を不安にさせることがあるため、穏やかでゆったりとしたトーンを心がけましょう。
- 相手のペースに合わせる
自分のペースで話を進めるのではなく、相手の理解度や反応に合わせて会話を進めることが大切です。
- 否定せず共感を示す
相手の発言に対して否定的な言葉を避け、「そうなんだね」「わかるよ」と共感を伝えることで、安心感を与えます。
優しい言葉と共感の姿勢は、認知症介護において信頼関係を築く鍵となります。丁寧で思いやりのある対応を心がけることで、相手もより安心して過ごせる環境を作ることができます。焦らず穏やかに、心を込めて接していきましょう。
他人と比べず、自分たちに合った介護を見つける
認知症介護では、他の家庭や状況と比較しないことがとても重要です。認知症は進行の速度や症状が人それぞれ異なるため、一律の方法が通用しないケースがほとんどです。他の人の介護状況を気にしすぎると、自分のやり方に不安を抱いたり、必要以上にプレッシャーを感じたりすることがあります。
自分たちに合ったペースを見つける
認知症介護では、家族それぞれの生活環境や状況に合わせたケアを重視することが大切です。たとえば、他の家庭で効果的な方法が必ずしも自分たちに当てはまるとは限りません。そのため、「自分たちのペースでできることをしよう」という考えを持つことで、過度なストレスを避けることができます。
自分を責めずに最善を尽くす
介護をする中で、「もっとこうすればよかった」「あの方法を試せばよかった」と自分を責める気持ちが生じることもあります。しかし、認知症介護では完璧を目指す必要はありません。できる範囲で最善を尽くしていれば、それで十分なのです。
気にしすぎないためのポイント
他人の状況を参考にしすぎない
他の家庭の状況を知ることは参考になる一方で、自分たちの方法が否定されるように感じることもあります。必要以上に比較せず、「自分たちにできること」を見つけましょう。
小さな成功を喜ぶ
たとえば、穏やかに会話ができた、一緒に楽しい時間を過ごせたといった日々の小さな成功を積み重ねることが、介護の自信につながります。
周囲のサポートを活用する
必要なときには地域の支援や専門家の助けを借りることで、自分だけで抱え込む負担を軽減できます。
一人で抱え込まず、周囲の支援を活用しましょう

介護はご家族だけで抱え込むものではなく、地域の支援や専門機関を頼ることで、心の負担を軽減できます。地域包括支援センターや訪問介護サービス、福祉施設の相談窓口など、介護に関するさまざまなサポートを活用することで、より安心して日々を過ごすことが可能になります。
真珠園の認知症なんでも相談窓口をご利用ください
真珠園療養所では、認知症介護に関するご家族の不安やお悩みを解消するための「認知症なんでも相談窓口」を設けています。介護に関する具体的な相談から、適切な支援サービスのご案内まで、専門のスタッフが丁寧に対応いたします。
「どう対応すれば良いかわからない」「介護の負担を少しでも軽くしたい」と感じたら、どうぞお気軽にご相談ください。ご家族の皆さまが安心して介護を続けられるよう、私たちが全力でサポートいたします。お気軽にご相談ください。
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